いつか『「サラダ記念日」の里』の坂を

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小学生高学年から高校の終わりまで
福井県に住んでいました。
教育程度の高い県で、その反証としてか
有名人が出ない県で、同時に
観光名所がない県でもありました。
(東尋坊・永平寺を除く)

その数少ない観光ネタのキャッチフレーズのひとつに、
「紫式部の里」というのがありました。
紫式部の父親がいにしえの福井県地方に任官していたという史実を、
思いっ切り大胆にウリにしたものでしたが、
よそ者のガキんちょにも非常に苦しいウリ文句に見えたものです。

数年前、英語学校に通った時期がありました。
外国人講師を揃えているビジネスマン向きの英語学校でした。

そこで講師に拙い英語力で自己紹介をしたわけですが、
相手が「dinosaur」が好きだという話になりました。
そこで驚いたことに福井県が今や「恐竜博物館」で
世界的にもちょっと名の通った場所になっている、
ということを教えられました。

福井県にある恐竜を中心とする地質古生物学専門の博物館のWebサイト。44体もの恐竜全身骨格をはじめとする千数百点もの標本や巨大復元ジオラマなどが圧巻の博物館。サイトでは利用案内やイベント情報、恐竜図鑑などが楽しめる。

授業中は拙い英語しか使えませんでしたが、
おそらくは、こんな会話になっていた筈です。
「まじであるか!」
「まじだよ」
「自分が住んでいたところの福井県は、
自分が住んでいた頃、
観光名所が無くて困っていた県だった。
故にその話は私にとって非常に驚きである」
「世界でも有名で、僕ももちろん行ったよ」
「へんぴな土地で交通も良くないはずである」
「そうだね、とても交通の便が良くなくて時間がかかった」
とにもかくにも観光名所が無い、
という悩みは解消されたということになりますね。

そこでもうひとつの課題、有名人、です。

当時、福井県出身だと水上勉がいる、
としきりに(県内では)言われたものです。
それに対しては、バカな学生だった自分らは
「地味〜」というリアクションでした。
(失礼!)

そんな中、自分が高校生の頃、
福井県出身・俵万智さんの「サラダ記念日」が発売され、
全国的・爆発的なヒットとなります。
これで有名人が出ない悩みも払拭された、
ということでいいんじゃないでしょうか。
芸能人は出ていないようですが。よく知りません。

さて、仕事で短歌の雑誌を見かけることが多いのですが、
やはり「サラダ記念日」はひとつのエポックメイキングだったと思えます。

自分はごくごく平均的な人間で
有名な人・エライ人は身近にいたためしがないのですが、
実は俵万智さんとはそれとは知らない頃のご近所さんでした。
もちろん当時面識は無く、
今でももちろんありませんが。

自分が住んでいた福井県福井市のその地域は、
風景を端的に説明しようとすれば、
田んぼ、坂、空き地、背後に山です。

山の中腹と裾野を開発した新興住宅地で、
まだ分譲開発中でした。
長く住んでいる住民はそれほど多くなく、
子供のいる家が多いベッドタウンでした。

そんな住宅街の広くない道を二つほど隔てて、
俵万智さんのご実家がありました。
家の前の空き地で友達と野球をやって(昭和だ・・)
道具をそのままにして僕は友達と出かけてしまったらしく、
俵さんのお母様がそれをうちに届けてくれたそうです。
母親からかなり後でそう聞いたことがあります。
自慢にもならないけど、やっぱり自慢です。

さて、自宅だった家の前の通りは少し広めの2車線で、
一つ先の区画から急坂となって
まっすぐ山のほぼ頂上まで伸びていました。
そもそも山を切り開き削った土地は、
あちこち坂だらけでしたが。
隣の集落から住宅街への入り口、そして山に続く
ど田舎メインストリートとでも呼ぶべき道が家の前の道だったのです。
だから小学校の終わりと中学・高校と毎日見続け、
見過ぎてうんざりしていた坂と山だったわけです。
そしてそれを見なくなってから20年は経っています。

あの坂はどれくらいの斜度で、
どれくらいの距離だったのか。
ネットを活用して調べることはもちろん可能ですが、
今の自分自身で自転車で上って確かめてみたい。
ここ数年、ずっとそう思っています。

恋人同士にとって最高のコンテンツとは何か?
という文章を目にしたことがあります。
結論曰く、恋人からのメール。

それであれば、中年の心に響くコンテンツとは?
思い出、とそれにまつわるモノ・コトじゃないかと思う次第です。

コンテンツ・ツーリズムを根底にして
エリア・ブラウジングを提唱(?)する身としても、
自分の「思い出」コンテンツである
あの道、あの坂を一度自転車で走って眺めてみたいと
ずっと考えているのです。

新興住宅地だったその住宅地は、
大きくなって巣立っていった子供達が誰も戻って来ず
寂れる一方だと聞きました。
キャッチフレーズをつけて、
人を呼び寄せるのもいいかもしれません。
曰く、『「サラダ記念日」の里』
いつかその里の坂を上る自分、となれるかどうか。

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