続きです。
前日の徹夜と自転車伊豆大島一周の後の
数時間の眠りの底から浮上すると、
既に船は東京湾内なのでした。
もう富津岬も通り過ぎていて、
「明治百年記念展望塔」のカラカッサが
海から見えるのか、なんてのは
既に終わったハナシになっていました。
東京湾アクアラインが見えましたが、
これなら富津岬はさぞ見ものだった筈、
という感想・・・。
神奈川方面にも陸地が見え始め、
大きな船とすれ違うようになりました。
沖から眺める羽田空港。
飛行機が大きな鳥か動物みたいなのでした。
往路は夜の闇に沈んでいた東京湾の
港湾施設群を眺めていると、
巨大な船影がその視界を覆います。
客船「飛鳥Ⅱ」の出現です。
飛鳥II思えば富津から東京湾フェリーに乗った時からの
伏線の回収なのでした。
(長かった・・・)
東海汽船のジェット船が後ろから来て、
たちまち追い越していきます。
湾内は日曜午後遅くの風景。
例によっての着岸前の回頭中、
乗客が乗降口に大挙しますが、
デカい荷物持ちは後方でじっと待ちます。
人波が引き始めた頃に
自転車を置いた筈のデッキに行くと、
何層のどこだったかわからなくなっていました。
船内のカウンターで聞くと、
個人か団体かを尋ねられました。
聞けば個人と団体は置き場所が違うのだとのこと。
どうやら自分は
結束のユルい団体の中に紛れた乗船であったらしく、
船内スタッフも前後で団体客の一人と判断して
団体用の置き場を指示した経緯だった模様。
知らん顔して団体客の群れに混じり、
順番を待って自分の輪行袋を持ち出しました。
まあ大した違いはなかった筈です。問題無し。
竹芝桟橋では、散っていく乗客の中に
自転車を組み立てて帰る元気者の姿もあり。
自分は輪行袋を抱えエッチラオッチラと、
「昨夜」見たばかりの景色の中を移動します。
そしてゆりかもめ・竹芝駅改札に到着。
普段ほとんど使わない路線で知りませんでしたが、
日曜夕方のゆりかもめは大変混雑していて、
その中へ輪行袋持ち込みとなってしまいました。
迷惑にならない乗車位置もヘッタクレも無し。
これまでで最高度に「ご迷惑おかけします」感で
ひたすら小さくなっていました。(気持ちだけ)
昨日土曜夜の新橋から乗った時とは
エラいギャップなのでした。
そんなゆりかもめの難所を越え、
往路の公共交通機関を逆に辿って帰宅しました。
今回は初めての伊豆大島行きで、
往復の船賃が7000円台、
魅力的なサイクル切符を使うでもなく、
切り詰めるでもなく贅沢でも無い2等ベース。
離島だと往復どちらも船が欠かせず、
しかも便数も限られています。
そんな制約のある中、
土日という普通の週末だけを使い、
泊まりは船内というコストを抑えた
急ぎ足の伊豆大島一周、
まさしくブラウジングなのでした。
次はジェット船で往復時間の節約か、
泊まりで余裕のあるサイクリングを
できればよいのですが。
トーマス・マンの言葉を借りるなら、
「内面的に他の人々よりも窮する者は、
多少の外面的愉楽を要求して差し支えない」
現代語訳では、
「公共交通機関の輪行袋で苦労する者は
多少の交通費と宿泊費を上乗せして
楽をしよう」
なのです。
「多少の交通費」が飛行機を指していると
拡大解釈をしてよいか悩ましいところです。